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メモリーズオフ5とぎれたフィルム稲穂信考察

序文

作品を追う毎に稲穂信の存在感が低下していると言う人がいます。 それが本当かどうか、検証してみました。 尚、4thでの活躍はメモリーズオフ〜それから〜稲穂信考察をご覧ください。

信のお節介

リバースカット

稲穂信の主な活躍は次のとおり。

  • 河合春人を見つけCUM研への行き方をさりげなく聞き出した
  • CUM研に追い返された仙堂麻尋に同調してあげた
  • 主人公の仙堂麻尋への不信感の原因を探り出した
  • 仙堂麻尋に別撮りのアイデアを授けた
  • ルサックに河合春人が現れて慌てふためく仙堂麻尋をけしかけた
  • 仙堂麻尋に観島香月の「裏切り」の不自然さを指摘した
  • 河合春人に告白されて困惑する仙堂麻尋を勇気づけた
  • マヂな話を茶化そうとする仙堂麻尋を叱りつけた
  • 河合春人が仙堂麻尋を疑う気持ちを払拭した
  • 河合春人に仙堂麻尋を探すようけしかけた

この台詞の意味を考えてください。

信「それをできるのは、俺じゃない。君なんだ」

仙堂麻尋が惚れているのは河合春人です。 だから、この台詞があります。 そして、この発言の動機も重要です。 他人のことがどうでも良いなら、余計なことを言わずに黙っています。 お節介を焼かずにはいられないから、この台詞があるのです。 決して必要以上に深くは立ち入らないが、常に気にかけていて、何時でも最大限協力してあげたいと思っている、これが信の言う距離感です。

スパイとしてターゲットから直接情報を聞き出すことは大変です。 たまたま通りがかった隣人と世間話して、自然な会話の流れの中でCUM研の話になって、物のついでに部室の場所を聞かれた・・・と思わせ、全く怪しまれず、かつ、狙いどおりに誘導して必要な話を聞き出すにはかなり神経を使います。

こうして見ると、稲穂信が居なければ、仙堂麻尋はCUM研に受け入れられることはなく、日名あすかとの仲直りも、映画を撮ることも、河合春人と知り合うことも有り得ません。

瑞穂編

稲穂信の主な活躍は次のとおり。

  • 雨宮瑞穂の恋の相談役
  • 雨宮瑞穂の真意を主人公に伝えた

結構重要な役回りですね。

悪魔?

稲穂信は、知っていることをその場で伝えず、情報を小出しにして話がこじれるのを楽しんでいるなどと言う人もいます。 それは本当でしょうか。

確かに、稲穂信は、仙堂麻尋や雨宮瑞穂に関する秘密を握っています。 しかし、その情報は、仙堂麻尋や雨宮瑞穂が稲穂信を信頼して託した物であり、本人の承諾無しに勝手に開示することはできません。

たとえ、良かれと思ってやったことでも、勝手な判断で勝手な行動をとれば、その先に待っているのは4thの紗代里編で鷺沢一蹴が冒したような大失敗です。 鷺沢一蹴は、他人の恋愛をぶちこわしておいて、何の責任も取っていません。 相思相愛になって結果オーライでしたが、それは運が良かっただけです。 自分が失敗のリスクを背負うなら、いくらでも勝手な行動をとれば良いでしょう。 しかし、リスクを背負うのは他人です。 リスクを背負う人にこそ決断する権利があるのであって、第三者が本人の意志に反する勝手なことをして良いはずがありません。 それは、決断権の侵害行為です。

「いや、稲穂信だって勝手な行動をとってるじゃないか」と言うなら、それは、本人が想定していない緊急事態が起き、かつ、本人の意思を確認できない状況で、止むを得ず稲穂信が代理判断しているだけです。 緊急でなかったり、本人の意思を確認できる時、稲穂信は勝手な判断をしていないはずです。 説得することはあっても、本人の意思を踏みにじったりはしません。

稲穂信は、真実を話した方が良いと考えられるなら、仙堂麻尋に真実を話すべきだと説得していたでしょう。 そうした説得をせずに勝手に秘密を暴露するのは、決断権の侵害行為です。 しかし、稲穂信は、仙堂麻尋のことも、河合春人のことも、限定的なことしか知りません。 表面的な情報は知っていても、日名雄介の死の真相、CUM研メンバーから嫌われる理由等、肝心なことを知りません。 その時点で知っている情報からは真実を話した方が良いかどうか分からないため、仙堂麻尋にアドバイスすることができないわけです。 もちろん、判断材料がないのだから、勝手に秘密を暴露することはできません。 つまり、稲穂信は自分の裁量でできることをやり、自分の裁量でできないことはやらなかった。 ただ、それだけのことです。 稲穂信はベストを尽くしていたのであって、批判されるようなことは全くしていないのです。

確かに、主人公の立場では、早く話してくれれば良かったと思うでしょう。 しかし、稲穂信の立場で考えれば、それは無理な相談です。 本人に無断で秘密を暴露するわけにはいかないし、主人公のことも信用できる相手かどうか分からないのだから、話せと言う方が無理ってもんです。 仙堂麻尋や雨宮瑞穂の立場に立てば、信頼して相談したのに、秘密を暴露されたのでは、たまったものではありません。 結局、早く話せと言うのは、他人の立場を無視した身勝手な要望に過ぎません。 身勝手な要望に応じないことは、批難する正当な理由とはなりません。

そのような不満を言う人には、一体、メモリーズオフの何処を見ているのかと問いたい。 メモリーズオフは、自分の立場だけでは見えてこない真実があることを示し、他人の立場に立って物事を考えることの重要性を教えてくれます。 とくに、今回導入されたリバースカットは、そうした目的の物であるはずです。 ちゃんと見ていれば、ヒロインのみならず、それぞれのキャラクターの都合を垣間見ることが出来るはずです。 それなのに、どうして、稲穂信のことを悪く言えるのでしょうか。 稲穂信はプレイヤーにとって恋のキューピッドであり、彼がいなければヒロインを攻略できないのです。 それなのに、その恩を忘れて文句ばっかり言うのは厚かまし過ぎないですか。 稲穂信のことを悪く言う前に、プレイヤーである貴方自身の襟を正してはどうでしょうか。

少なくとも、3rd〜5thについては「メモリーズオフは稲穂信に始まり稲穂信に終わる」と言えるでしょう。 3rd〜5thでは、稲穂信は極めて重要な役割を担わされているので、稲穂信を理解(=作品の中で登場人物がどのような役割を担っているかを読み解くこと。 読み解いた結果として、肯定的立場となるか否定的立場となるかの方向性は問わない。 言い替えれば、読み解かないならば、結果的に肯定的立場となろうとも否定的立場となろうとも、理解したことにはならない。 )していない者はメモリーズオフを全く理解していないと言えます。 少なくとも、このサイトで取り上げた範囲に限れば、具体的描写を見れば分かるとおり、いずれの稲穂信批判も的外れであることが明らかです。 もちろん、ここで取り上げていない物については詳細な検討をしていないので、的を射た批判が存在する可能性は否定できません。 しかし、少なくとも、ここで取り上げた範囲に関して言えば、理解しようともせずに批判していることは疑う余地がありません。 ここでは、自分の無理解を棚に上げた批判に苦言を呈しているのであって、理解したうえでの批判は大歓迎です。