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メモリーズオフ〜それから〜飛田扉悪人説の矛盾

このページはメモリーズオフ〜それから〜飛田扉考察の一部です。まずは、そちらをご覧ください。

書籍の資料価値

陵いのり編を描いた小説は2つあります。

このうち、飛田扉悪人説の根拠となっているのは前者の方ですが、著作権表示は「原作:キッド 著・長井知佳」と書かれています。 通常、原作会社が主導し、細かい指示に基づいて書かせたなら、ライターは「脚本:○○」と書かれるでしょう。 また、書いた後、細かいチェックを受けているなら、「監修:○○」と入るはずです。 そのいずれにもなっていない、ということは、この小説は、メモリーズオフを元にして、長井知佳氏が自由な発想で書いた小説と考えられます。 尚、長井知佳氏は、これまでメモリーズオフ本編に関与した経験はありません

役職3rd本編4th本編4th小説(前者)
プロデューサー市川和弘市川和弘
ディレクター
シナリオ緑犬ふう*1林直孝・松川しゅうさく・安本亨・たきもとまさし長井知佳
監修*2柴田太郎

事実、長井氏が書いた小説とシリーズ本編との設定の矛盾点を指摘する人(4月26日の記述)もいます。

それに文章がちょっとどころかかなり変。ふつうこの辺は校正段階で拾って修正するものだと思うのだが、この作品はどうもそれをサボったような雰囲気がある。小説の場合校正担当者によると著者校正の最低でも二重の校正をかけるはずで、原作付きの場合は著作者の校正も必要になる。もちろん「メモそれ」の場合はKIDだ。なのにほたるの一人称を「私」と書いてしまったり、目立つ失策が多すぎる。

「目立つ失策が多すぎる」のであれば、「著作者の校正」を「サボった」のではなく、「著作者の校正」を初めからやっていないと考えた方が自然でしょう。

関連書籍がどのようにして執筆されているかは、日暮茶坊氏の書籍解説を見れば参考になります。 ちなみに、日暮茶坊氏は、1stの双海詩音と2ndの寿々奈鷹乃のライターで、3rd〜5thの本編にはノータッチです。

以下、「CLANNAD アンソロジー・ノベル」の項目。

渚編を担当してくれと言われ、ゲームをはじめてみたら……長い! 本当に長い! っていうか、全然おわらない! でも面白い!(笑) この手の仕事を引き受けたら、必ずゲームは最後までやるようにしてます。当然と言えば当然ですが。

これを見ると、設定等の書籍執筆のために必要な情報は、原作会社の指導ではなく、基本的にゲームから得ているようです。

以下、「想い出にかわる君 〜偽りの神様 上〜」の項目。

苦労したのは想君本編のライターさんが1st&2ndと違う方なので、キャラクターや世界の雰囲気などを汲み取りづらかったこと。

これも、上で述べたことを裏付けていると思われます。

以下、「メモリーズオフ〜それから〜 Tea Party」の項目。

書いていて一番困ったのが、やっぱりのんちゃんの秘密話(笑)。アレ、実はきちんとした法則があって書かれているらしいのですよ。
その資料をお願いしてあったんですが結局届かなかったので、適当に書くよりは……と大分減らしました。期待してた方、ゴメンなさい(笑)。

つまり、詳細な設定資料は、書籍執筆者が原作会社に要求する必要がある。 言い替えると、書籍執筆者が要求しなければ出さない。 これ、キッドのゲームの話です。 つまり、少なくとも、キッドは、原作への忠実性にそれほど固執していないと読み取れます*3

以下、「メモリーズオフ〜それから〜 桜下乃交」の項目。

主人公は雅。お祖母様と家の呪縛から逃れようと藻掻いて……という基本路線は変わりませんが、ゲーム本編とは大分違う感じになってます。何より歩が強い(笑)。
ちなみに、ゲームでは当然、雅は一蹴に惚れて一歩踏み出していくわけですが、小説版では異なる設定になっています。

故意に原作と違うように書かれることもあるのですね。

以下、「メモリーズオフセカンド 〜True face〜」の項目。

本編の主人公である健は、既にほたるとゴールイン(?)。 さて、どうしたもんだろう……と、ゲームの相摩編をやり直しながらふと思いついたのが、本編でも一瞬しか出てこない希の元彼。
彼の設定を作ってプロットをKIDさんに提出……そのままOKが出たので、主要人物として登場してもらいました。

これも、故意に原作と違うように書かれるケースですが、プロットは出しているようです。 しかし、監修などの表示がないことから見て、詳細な展開まではチェックされていないと読み取れます。 それなら、かなり執筆者の自由度が高いと読み取れます。

以上を見る限り、関連書籍が絶対である・・・とは、とても言えそうもありません。 そもそも、原作に忠実であることを求めるなら、言われなくても出せるだけの資料を出すでしょう。 いや、原作のライターに書かせるのが一番確実です。 では、何故、違う人に書かせて、かつ、資料も要求された範囲でしか出さないのでしょうか。 それは、原作にない新しい視点でシナリオを書いて欲しいからではないでしょか。 つまり、最初から、原作と違うことが求められているのです。 それでは、原作を深く知るための資料としては全く役に立たないですね。

願望と現実の違い

関連商品を買う人は、次のような願望を持っています。

  • 関連商品は本体商品の設定を正確に反映して欲しい
  • 関連商品の描写が公式設定であると思いたい

本編に忠実であることを期待して関連商品を買うのは、ファンとして当然の心理でしょう。 しかし、その願望が現実となっている根拠はありません。 言い替えると、願望=現実と思うことは根拠のない思い込みでしかありません。 一方で、メモリーズオフのような1パッケージ完結のゲームでは、ファンが、続編が前作に忠実であることを求めるとは限りません。 前作をやってない人もいますし、前作キャラを出すなと言う人もいます。 いずれにせよ、前作の設定を忠実に反映して欲しいとする願望はあまり多くない。 その結果、【前作に忠実でなくていいが、関連商品は忠実であるべき】とする希望的観測が産まれてくるのです。

しかし、希望的観測が現実と一致しているとは限りません。 他社が作る関連商品には本編との高い整合性を求めておきながら、自社で作る本編間の整合性を取らないのでは本末転倒です。 常識的に考えて、他社が作る関連商品に整合性を求めるなら、自社製品の整合性はそれ以上に拘るでしょう。 いや、そこまで拘るなら、他社に作らせずに、自社で作った方が早い。 それでも、関連商品を他社に作らせる以上、本編と関連商品の整合性が、本編間の整合性を上回ることはあり得ない。 よって、3rd本編と4th関連商品に矛盾があるとき、【3rd本編と4th本編の間に矛盾があるのであって、4th本編と4th関連商品は整合性が取れている】と解釈するのは、著しいまでに無理があります。 もちろん、3rd本編と4th本編の整合性が取れているという保証は無いけれど、それ以上に、4th本編と4th関連商品に食い違いがある可能性が高い。 3rd本編から4th関連商品に至る何処かで設定の食い違いが発生しているなら、4th本編と4th関連商品に食い違いがあるのは火を見るよりも明らかです。

先に述べた検証結果からも明らかですが、関連商品はほぼゲームをプレイしただけで書かれており、作家とプレイヤーの持っている情報量は大差ありません。 また、意図的に本体商品と違うことを書く場合もあります。よって、明らかに願望=現実が実現できてない

ここ近年は書籍にとって冬の時代です。 通常の文学作品でさえ売れ行きは芳しくありません。 ましてや、ギャルゲーの書籍がギャルゲー本体以上に売れるはずがありません。 加えて、書籍は単価が安い。飛田扉悪人説の元になる小説もわずか998円です。 発行数も利幅も限られている書籍で、ゲームと同様の手間を掛けることは不可能です。 ゲームのように、チームプレーで、キッチリ擦り合わせをしながら制作を進める・・・という手間は掛けられないのです。

また、別の商品として発売する以上、新規追加要素が求められます。 ゲームと全く同じ内容なら、誰も買わないでしょう。買ってもらうためには何かしら新しい要素が必要です。 そして、それを最も手っ取り早く実現する方法は、先入観を持たない作家を起用してシナリオを描かせることです。

キッチリとゲームの設定に合わせるのが理想でしょう。 しかし、代わりに、その手間は膨大になります。 新規追加要素と忠実性を両立しようとすれば手間が余計に掛かります。 ゲームの何十倍も売れるのでなければ、とても、手間賃が回収できないでしょう。

Last modified:2010/04/30 01:19:52
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*1 謎の人物。その正体は柴田太郎氏との噂もある。

*2 4thのクレジットにはシリーズ監修として柴田太郎氏の名前がある

*3 他の会社でも大差ないと思う