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シリーズを超えたゲーム

infinity/integralシリーズを超える要素を持つゲームを紹介する。

主人公

主人公を悪役とする設定ではないなら、一般に、プレイヤーは主人公に英雄的行動を求める。 それは、冷静に必要な情報を収集し、集めた情報を元に論理的な状況判断をし、リスクを恐れずに必要な手段を講じることである。 それなのに、明らかに必要と思われる情報から目を背け、あり得ないほどデタラメな状況判断をし、やるべきと分かりきったことを永遠に先延ばしにするような、英雄どころか平均的な人間をも下回る行動しか取れないようでは主人公失格である。

主人公に超人的なスペックは必須ではない。 しかし、最低限の常識にくらいには従って行動して欲しい。 あまりにあり得ない行動を取りすぎるのは人間ドラマとして興ざめだ。 答えを出そうと考えるのは良い。 しかし、悩んだり嘆いても答えが出ないことが分かりきっているにも関わらず、意味のある行動を取ろうとせずに、いつまでも悩んだり嘆いたりし続けるのは、もうウンザリだろう。 それは、物語の時間稼ぎをする水増し工作に過ぎない。

プレイヤーは、誰もが、その世界で起きていることを、正確かつ早く知りたいと思っている。 そうしたプレイヤーが知りたいと思う情報を、何時まで経っても提供しようとしないような主人公は、プレイヤーの分身として失格である。 もちろん、提供する最大限の努力をしたのであれば、不可抗力によって阻まれるのは仕方がない。 しかし、努力すらしないのでは、もはや、プレイヤーの分身とは言えない。

さて、主人公の行動をパターン分けすると次のようになる。

  • プレイヤーが完全に納得できる行動を取る・・・(A)
  • プレイヤーの考えとは違うが、それもアリかなって行動を取る・・・(B)
  • プレイヤーとしては納得し難い行動を取るが、止むを得ない事情がある・・・(C)
  • プレイヤーを唖然とさせる行動を取り、その行動を取る必然性もない・・・(D)

infinity/integralシリーズやメモリーズオフ等、KIDのゲームでは、主人公は(D)行動を取ることが多い。 例外として、Separate Heartsの主人公は(C)行動である。 KIDのゲームに限らず、(D)行動を取る主人公は意外に多い。良くて(B)行動が市販ゲームの相場だろう。 しかし、希に、(A)行動を取る主人公がいる。以下に、その事例を紹介する。

Soul Link(アダルト)

主人公は2人居るが、とくに、兄の方が素晴らしい。 テロリストと銃撃戦をやったり、マッチョなボス・キャラと肉弾戦をやったりと、やたらスペックが高いのは設定(任官直前の優秀な士官候補生)のおかげとしても、必要に応じた情報収集、論理的で妥当な状況判断、思い切った決断力は、KIDのゲームの主人公にも見習ってもらいたい。 弟は、かなりスペックが落ちる(士官候補生だが、取り立てて優秀なわけではない*1*2)が、必要に迫られたときの奮闘ぶりは好感を持てる。 「兄>>>弟>(越えられない壁)>倉成武>>>優希堂悟>>>>>石原誠」というところだろう。

物語に出てくる技術や現象は、いずれも、作品の時代に沿った順当な未来設定で、時代考証と相容れないような設定=超越設定は一つもない。 援軍が期待できず、教官1名+士官候補生5名+自称民間人1名(後に、士官候補生1名、ホテル従業員1名、お子様1名、犬1匹が追加、教官1名、主人公1名脱落)だけでテロリスト達を撃退しなければならない。 後付け設定のような反則技はなく、妥当な設定の制約の中で、危機的状況の活路を見出すべく、可能な努力を全て行なって、ベストの選択を模索し、それを実行に移して行く。その過程には説得力がある。

PS2版Soul Link EXTENSION(CERO D:17歳以上)も出来は良いが、 オリジナル版から追加されたシーンはやや蛇足感がある*3。 オリジナル版は、テロリスト達の隔離に成功して以降、脱出するまでは戦闘がないので、やや物足りないかもしれないが、PS2版で追加された戦闘シーンは、 【最優先される機能である乗員の生命の安全のためのシステム・・・を逆用して隔離状態を作り出しているので、それを解除するのは困難】という設定を脅かしているように見える。 尚、この物語では、性的行為が最後の切り札と密接な関係があるため、PS2版においても、性的行為があったことを示唆する描写が残されている。

序盤の探索シーンの難易度が高すぎる*4のが玉に傷だが、それを除けば、難易度は高くない。 また、登場人物や設定や心理の長文解説も少々ウザイ。 これは文章で長々と書くのではなく、それを示唆するような展開を物語に盛り込むべきだろう。 ラスボスの正体等を除けばトリックも謎解きも殆どないが、宇宙を舞台にした近未来人間ドラマとして良く出来ている。 これだけしっかりしたシナリオを描けるのだから、作者は、さぞ、経験豊富なライターかと思ったら、藤海琢樹氏の描いた作品は非常に少ない。

Ever17のパクリだと言う人もいるようだが、両者の共通点は、SFでは良くみられるありふれた設定部分以外にないそれぞれの作品の独自部分には殆ど共通点が見られない。 Ever17の主要設定である第三視点、および、それに関わる設定はSoul Linkには出て来ない。 事件の首謀者の目的や正体も全く違う。複数の主人公の視点で進行することは、それ自体、珍しいことではない。 むしろ、複数の主人公が存在する理由や、視点切替の制御方法等もかなり違っている。閉鎖空間はSF設定としては極めてポピュラーな部類である。 アレの設定はキュレイに似ているけれど、これも科学研究の成果を反映した設定であり、近年のSFとして好んで用いられやすい設定であって、Ever17のオリジナル設定ではない。 以上、パクリどころか、似ていると言うことさえ難しい程度の類似点しかない。この程度で似ていると言うなら、SF作品の殆ど全てが似ていることになる。

無限のリヴァイアスのパクリだと言う人もいるが、背景設定も展開も大きく違う。 テロリスト(と思しき)集団に襲われ、宇宙空間に浮かぶ閉鎖空間に閉じ込められながら、いつまで経っても救援が来ないという状況は似ているが、それ以外の、設定は似ても似つかない。 Soul Linkでは、最後まで、テロリストとの戦いが描かれる一方で、無限のリヴァイアスでは、テロリストの脅威は早期に取り除かれている。 救援が来ない事情も、Soul Linkでは、テロリストが核を使って脅しているからなのに対して、 無限のリヴァイアスでは、政府内部の陰謀*5となっている。 背景設定についても、Soul Linkが、極ありふれた地球軌道上の人工衛星開発以外は取り立てて変わった設定がないのに対して、 無限のリヴァイアスでは、太陽系全域に進出しており、太陽系の半分の潰滅という特殊な設定がなされている。 こうした違いにより、物語の主要部分の展開は全く違う類似点は、よくある設定の些細な類似に過ぎない。 Ever17と比べれば、まだ、似ている方だと言えるが、パクリと言うほどの類似点は見られない。 この程度でパクリと言うなら、99%の物語は何かのパクリになるのではないか。

トリック

infinity/integralシリーズには、多少のトリックは含まれているが、凄いと言わせるトリックはない。凄いトリックを見たいのであれば、以下のようなゲームを薦める。これらに比べれば、infinity/integralシリーズのトリックは子供騙しだろう。

「車輪の国、向日葵の少女」「G線上の魔王」(いずれもアダルト)

infinity/integralシリーズの場合は、主人公の不自然な行動=志村現象によって、「何かのトリックの伏線だな」と読者に簡単に気付かれてしまうが、これらのゲームには、そうした志村現象が存在しない。 トリックの条件に示したような心理的トラップを上手に活用しているから、志村現象に頼る必要がない。 具体的に説明すると完全にネタバレするので、詳細説明は控える。「G線上の魔王」は、「車輪の国、向日葵の少女」に比べて、更にパワーアップしている。 クリアした人だけに分かるヒントを出しておくと、これらのゲームに使われるトリックは、「G線上の魔王」に出てくる「魔王」の犯罪講座で言われていることそのまんまである。 尚、「魔王」の犯罪講座は、極めて論理的かつ合理的な説明であり、これだけでも一読の価値はあるだろう。

この2作に共通して言えるが、答え合わせが非常に早い。 そろそろ読者が何か気付いたろうという頃に答え合わせをする。 【謎の存在を匂わせておいて、いつまでもズルズル引っ張る】ということがない。 infinity/integralでは、プレイヤーが謎の正体に何となく気付いていても、主人公は何も感づいておらず、答え合わせどころか、答えを探る行動にすら出ないので、プレイヤーとしてはかなりイライラする。 そんな、喉元に何かが刺さったままのような不快感をいつまでも解消しないのはinfinity/integralの最大の欠点だが、これらのゲームにはそれらの不快感が存在しない。 この潔さは、仕掛けたトリックに対する自信の現れではないだろうか。

特筆すべきことは、これらの作品が、全て、日常設定の中で描かれていることである。 「車輪の国、向日葵の少女」の舞台は、異世界ではあるが、我々が知らないような物理法則が働いている・・・ようなことは一切ない。 この物語の世界は、法律や政治体制等を除けば、我々の住む世界と何ら変わりない。 「G線上の魔王」の舞台に至っては、架空の企業や団体を除けば、ほぼ完全に我々の住む世界観と一致する。 物語の中でだけ通じる物理法則=超常設定がないのだから、後付け設定は完全に不可能である。 infinity/integralのような超常設定が許されると、トリックを出しても、それを実現する仕掛けがご都合主義に見えて、驚きが半減する。 一方で、これらの物語のように、日常設定の制約を受け、読者とフェアな立場での大胆なトリックは、読者にありのままの驚きを提供してくれる。

「車輪の国、向日葵の少女」はコンシューマ版が準備されているようだ。

伏線

Fate/stay night(アダルト)

お子様は、PS2版Fate/stay night[Realta Nua](CERO C:15歳以上)をどうぞ。

「ここであの伏線が効いてくるのか」というか、「あれって伏線だったの?」というくらい伏線の張り方と回収が上手い。全く役に立ちそうもない、どうでも良さげな設定というか、超極弱アイテムが最後の切り札になるという意表を衝いた伏線、かつ、ちゃんと辻褄が合ってることにビックリ。

マブラヴ(アダルト)

どうでも良さげなエピソードの数々が、続編のマブラヴ オルタネイティヴ(アダルト)で重大な意味を持ってくる。ある人物の変人っぷりを見せつけるだけのシーンかと思ったら、続編における人類救済に必須の描写だったという2作にまたがる壮大な伏線・・・と言えば聞こえが良いが、どちらか一方しかプレイしていない人にとっては、全く伏線としての役目を果たしていない。ここまで重要な伏線となるなら、1つのソフトとして発売すべきではないのかと、少々、疑問には感じる。とはいえ、開発の長期化による決算上の都合等、諸所の大人の事情があったのだろうと思われる。

ちなみに、この変人さんが提唱する「因果律量子論」って、言葉通りに解釈すると単なる隠れた変数理論ではないのかと。その他、真面目に科学考証するとおかしな所が多々あるが、その辺は、フィクションとして目を瞑るべきだろう。科学考証以外にも突っ込む所は多々あるが、その辺はご愛嬌ってことで。

シーン毎に、リアリティがあったり無かったり、説得力の差が激しい。マブラヴ オルタネイティヴのグロ画像は伝説となっているが、グロ画像そのものよりも、そこに至るまでの過程に、少々、唐突さを感じる。常識で考えて、教官まで努める経験豊富な軍人が気を緩めているのであれば、プレイヤーは、十分な警戒の末に安全が確認されたと認識するはずである。その状況で残存する敵に襲われるのは、反則技ではないだろうか。グロ画像があることを事前に聞いていても、このタイミングでの出現は予想不可能である。

主人公はかなりヘタレ。それに比べて、ヒロイン他の立派なこと。柏木晴子なんて立ち絵があるだけのチョイ役だったはずなのに、マブラヴ オルタネイティヴでは滅茶苦茶カッコいい*6。お涙頂戴シーンもあるが、単なる浪花節とは違い、登場人物が自分の立場でベストと思われる選択に殉ずる所に説得力がある。切り札を守れば万が一の勝機はあるが、切り札をやられては人類の明日はない。人類の明日がなくなれば、この戦闘で生き残っても意味がない。という状況で、切り札を守るために必要であれば自らの命を賭すことも辞さないということであって、命を粗末に扱っているわけではない。それだけに、主人公のヘタレさは非常に際立っている。

全年齢版もある。

システム

コンチェルトノート(アダルト)

夢の競演

  • ギミック:打越鋼太郎
  • トリック:るーすぼーい
  • 伏線:奈須きのこ
  • 人間ドラマ:
  • 主人公考証:藤海琢樹
  • 監督:中澤工

コレ最強かと。

Last modified:2010/05/01 21:16:11
Keyword(s):[共通]
References:[Ever17レビュー] [12RIVENレビュー] [Remember11レビュー]

*1 銃の扱いの駄目さっぷりは士官候補生にあるまじきレベル

*2 PS2版では、何故か、主人公に就任した途端に兄に準ずるハイスペックに成長する

*3 作業機に追加された装備は不自然だし、それを使いこなす登場人物のスキルも無理があるように見える。最後の、敵も含めた大団円はリアリティに欠ける。ちなみに、この大団円だと、事実関係が正確に認定されたなら、現行法ではラスボスを罪に問えないだろう。

*4 PS2版では、バッドエンドにヒントが追加された。

*5 私利私欲のためではなく止むを得ない事情がある・・・ということにはなっている

*6 ファンディスクのALTERED FABLEでは正規ヒロインに昇格している