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Remember11レビュー

ネタばれの有無

このページは、未だプレイしていない人が、購入の参考に見ると思われるので、極力、ネタばれはしないように注意したい。 でも、ネタばれしちゃったらごめんなさいで。

前作との比較

Remember11は、Ever17レビューで述べたような評価と比べて、かなり低く評価されています。その原因を挙げてみます。

類似点

人物描写

一部を除く人物描写については、Ever17と同様に、良く描かれています。 かなり不評を買っている女性=黛鈴でさえ、その境遇の詳細説明があり、その行動には合理的説明がつきます。

物語の辻褄

これまた、極めてトリッキーで複雑なシナリオでありながら、物語の辻褄をキッチリ合わせているところは流石と言うべきでしょう。

最大の仕掛け

最大の仕掛けは物語の4分の3辺りで明かされます。 序盤から時間移動の可能性は明確に示されているので、現象的には唐突さはありません。 ただし、・・・・・・。

志村現象

トリックを成立させるための志村現象(プレイヤーが気付いていることを主人公が不自然なまでに露骨に無視する現象)が多数ある点は前作と同じです。いや、プレイヤーにとってのイライラ度は前作以上かも知れません。

あっと驚くトリックを期待するのであれば、シリーズを超えたゲームで紹介するゲームをやった方が良い

相違点

風呂敷の畳み方

物語が4分の3辺りまで進んだ所で、主要な答えの大部分が一気に明かされます。 その多くは、Ever17のような段階的な答え合わせではなく、急激に答えが提示されるため、事前説明のない唐突な内容に見えます。

最大の仕掛け

作品中で起きていた現象が人為的に引き起こされていたことについて、事前に伏線等が用意されておらず、時代不相応の科学技術の存在は唐突すぎます

序盤から何度も明記された現象が何度も起きていることは、明示された現象であり何ら唐突な所はありません。 しかし、時代設定が現代に極めて近い未来、物語世界が現実に極めて似た世界を示しているように見えるため、作品中で起きていた現象を人為的に起こすことが可能なようには見えません。

この問題を解決する手段の一例として、現実世界では不可能なはずの装置をいくつか登場させるなどして、現実世界と物語世界の差異を示唆するやり方があります。 ただし、無制約設定であると誤認させないよう、あまり大したことはできない装置でなければならない*1。 そうした装置を導入すれば、物語中で起きた現象が人為的であってもおかしくないので、唐突さが解消されます。 ただし、現実世界と全く違う世界だと読者に認識されると、何でもアリの万能設定になり、物語の条件に反します。 かと言って、現実世界との違いが読者に認識されないと唐突さが解消されません。 極まれに現実では不可能な技術も存在するという程度のバランスにすることが重要です。

以上、口で言うのは簡単な割に実際にやるのは難しいですが、プロの作家なら出来て当然でしょう。

背後関係

物語の背後に何らかの陰謀等があることが示唆されながら、その内容については不明確なままとなっています。

人物描写

優希堂悟と榎本尚哉の二名の人物描写は、全くと言って良いほど描かれていません。 この二名は、この物語において重要な役割を果たす人物です。 とくに、優希堂悟は極めて重要な人物であるのに、詳細な人物描写がありません。 描かれている範囲内に限れば、極めて異常な人物であり、感情移入も共感もしようがありません。 シナリオ展開と役所を考えれば、彼らがそのような扱いであることに無理があるように思えます。

大団円じゃない

涼蔭穂鳥の安否とか、死んだはずの人の扱いはどうなるのかとか、黛鈴が報われないとか、最後はとても大団円とは言えません。

答えのない謎

Remember11は、未完成・未完結と批難されるが、果たして、本当にそうだろうか。 Remember11では、グッドEND終了後にも、いくつかの謎が残る。 グッドEND終了後に、多くのプレイヤーが疑問に思うであろうことは、次のようなことだろう。

  • 最後の黛鈴の台詞の真相
  • エピローグの犬伏景子に宿る人格とその後の行動
  • スフィア内の殺人鬼の正体
  • 第三○○の正体
  • 涼蔭穂鳥の動向

このうちのいくつかは、バッドENDを回収しないと答えが出ないが、注意深く観察していればグッドENDルートだけでも判明する謎も少なくはない。 いずれにせよ、ほぼ全てに一応の回答は用意されている。 犬伏景子のその後の行動が二者択一のリドル・ストーリーになることを除けば、本編中に明確な回答が用意されているのである。

しかし、これらの回答を見出そうとして、バッドENDの回収等を進めていくと、ユウキドウ計画や優希堂沙也香等の新たな謎が浮かび上がる。 そして、その新たな謎については、監督も「全ての情報を提示していない」と認めているように、本編中に明確な回答が用意されていない。 とはいえ、その謎が、物語において重大とは言えないなら、回答がなくても、そのことは物語が未完成・未完結であることを意味しない。 物語において重大となるのは、次のようなケースだろう。

  • 主人公とその仲間の利害に重大な影響を及ぼす
  • 読者に対して序盤から明確に回答の必要性をアピールしている

Remember11の残された謎は、何れにも該当せず、物語において重大と考えるだけの合理的理由がない。 確かに、読者が知りたいと思う気持ちは強いかもしれないが、その気持ちの度合いと物語における重大さは別問題である。 よって、Remember11の残された謎は、物語が未完成・未完結であることを意味しない。

ただし、物語が完成・完結しているかどうかと、作者の責任を果たすことは別問題である。 残された謎について、思わせぶりな書き方をしたのは作者である。 読者の興味を過度に引くように仕向けておいて、その謎に回答を示さないのは無責任と言える。 そして、シナリオが間に合わなかったにしろ、次のような対応を取れば、問題は回避できたはずである。

  • 最後の黛鈴の台詞は削除するか、あるいは、そっくり差し替える
  • 最後に冬川こころと犬伏景子が何事もなかったかのように会話するシーンを挿入し、懸念が冬川こころの思い過ごしであることを示す
  • ユウキドウ計画失敗エンド等における、彼と彼の人格交換など無かったことにする
  • 優希堂沙也香に関する描写を一切合切削除する

監督は「先に発売されたPS2版も、あれで完成・完結した物語」と言っている。 それならば、謎を残す思わせぶりな描写の多くは、作者の言う「完成・完結した物語」には必要がないはずである。 Remember11の解釈で無用な混乱を招いたのは、全て作者の不手際によるもので、その責任は決して軽くはない。

まとめると、Remember11の作品の完成度は低くはないが、読者の満足度は低いと言える。

リドル・ストーリー?

Remember11がリドル・ストーリーだと言う人がいる。果たして、そうだろうか。 リドル・ストーリーは答えを曖昧にすることによって作品の面白さを引き出す手法であって、答えを流動的にした方が作品がより面白くなる場合に成立する。 ただし、作者の努力または能力不足により面白い回答が用意できない場合は含まない。 もちろん、突出した能力を持つ読者が作者よりも優れた答えを用意できる場合も含まない。 あくまで、商業作家に求められる水準の答えよりも一般的読者の想像に任せる方が優れる場合に限る。

有名な「女か虎か?」では、除去不可能な制約により確定した結末を導くことが困難になっていることと、特殊な能力を持たない一般読者にも容易に空想を膨らませられることがリドル・ストーリーを成立させている。 「女か虎か?」では、究極の選択による主人公の女性の苦悩が面白く、かつ、その苦悩の原因は結末の確定を困難にする原因にもなっている。 物語を面白くする原因を取り除いては物語が成立しないから、この原因は除去不可能である。 恋人の命と独占のどちらを優先するかは価値観の問題であり、どちらの答えを選んでも価値観の違う人の反発を産む。 また、どちらを選択したとしても、他方を切り捨てることは容易でないため、決断を正当化するだけの理由説明が難しい。 選択困難だからこそ面白いのであって、どちらかを選択する合理的な説明がつくはずがないのである。 そのために、確定した結末を描くことは、どんな優れた作家にとっても難しい。 この時の主人公の苦悩を事細かに説明しなければならないのでは、どんな作品も成立し得ない。 つまり、この場合の空想は、一般的読者が誰でも持つ知識に依存しているのであって、特殊能力を必要としない。 よって、2通りの結末は、特殊能力のない一般的読者にも空想に想像を膨らませることができる。 以上により、「女か虎か?」では、原理的に、答えを流動的にした方が作品がより面白くなる。

以上のとおり、リドル・ストーリーとは、一般的読者の空想を引き出す描写すら用意しない投げっ放しの未完成作品とは、全然違う作風である。 もし、Remember11がリドル・ストーリーであると言うなら、読者が独自に二次創作を用意するのではなく、一般的読者の空想を引き出す描写が示されてなければならない。 多くの考察サイトがやっているような考察者が作った二次創作は、Remember11がリドル・ストーリーであることを示してはいない。 そして、作品中に埋め込まれた一般的読者の空想を引き出す描写を見つけたという話は、未だに、聞かない。

仮に、故意に難解な作風を狙ったとしても、謎を解き明かした読者に自分で謎を解いたという満足感を与えるに過ぎない。 そうした満足感を与えたいなら、読者に気付かれないように上手に解答に誘導すれば良いのであって、何がヒントなのかさえ分からないほど難解な作りにする必要は全くない。 自力で難解な謎を解いたと自覚すれば大きな満足感を得られるのだろうが、難解にすればするほど得られる満足感も大きくなるというわけではあるまい。 むしろ、必要以上に難解にすれば、解答に辿り着けなかった人に多大な不満を与えるだけに終わる。 それで失敗するくらいなら、素直に、解答に誘導して、読者が自分で解いたように思い込ませた方が良い。 そして、その上手な誘導こそが、作者の腕の見せ所である。 それは、ミスディレクションやレッドヘリングの初歩的テクニックの応用であり、プロの物書きなら、出来て当然のことである。 ろくにヒントも用意しないのは、そうした上手な誘導が出来ない実力不足を誤摩化すためと言われても仕方ないだろう。 もし、作品の描写だけで解答を導くことは不可能であって、足りない部分を想像で補完する必要があるとしたら、もはや、プロ失格である。 それは、本来、作者がやるべき仕事を読者まかせにしてしまったのであり、プロの物書きとして最低限必要な仕事をしていないことになる。 それでも解答を導けたのなら、それは、読者の功績であって、作者は何もしていないに等しい。

事実、Remember11の難解さは、稚拙な素人創作を披露して喜ぶ人達の一部を満足させただけに過ぎない。 確かに、小学生が考えるような幼稚な後付け設定を受け入れることによって、「完全」な解答を得た事例は多々見受けられる。 しかし、作品の描写によって示唆された先付け設定や大人の閲覧に耐えるレベルの後付け設定に基づいて、完全な解答を得た事例は1つたりとも見られない。 例えて言うなら、若気の至りで書いた恥ずかしいポエム集を他人に見せて快感を得るようなレベルの人しか満足させていない。 そうした人生の汚点を見られたら恥ずかしくて生きていけないというレベルの人には、多大な不満を残している。 当サイトにおけるRemember11考察は、後者を満足させられる解答を作品の描写から導けるかどうか模索した物であるが、100%完全な答えには未だ到達していない。

作者談話

各種資料によれば、Remember11がリドル・ストーリーではないことは、ほぼ確実なようだ。 故意に謎を残したとする人は、中澤氏の次のような言動を根拠としている。

先に発売されたPS2版も、あれで完成・完結した物語としてまとめた上で、僕らはリリースいたしました。
大変わかりにくい物語であり、当然の結果として賛否両論、お叱りからお褒めまで様々なご感想を頂ける作品となりました。
否定的なご意見を抱かせてしまった方には申し訳ない気持ちになりますが、僕らとしては当時の状況下で「可能な限り」ベストをつくした成果物でした。

この記述を拡大解釈し、謎が残っているRemember11を「完成・完結」と作者が言っているのだから、故意に謎を残したのだと言う。 そして、そう解釈する人は、故意に謎を残したのは、プレイヤーを無限ループに陥れる等の演出上の都合だと言う。 しかし、彼らは、「完成・完結」の意味することを歪曲しているのである。 「完成・完結」の正しい意味は後で詳しく述べる。

PSP限定版プレミアムブックには、次のように書かれている。

中澤:


あと、ユーザーさんのさまざまな解釈を見ていると、明確な答えを出すのが悪いような気がしてしまって・・・。 最初はやむを得ず隠していましたが、今では、隠さなければならないという気すらしています (誰が書いたか不明の脚注:それでは納得できない人も多いと思うのでPSP版では新機能の「年表」の中に“真相”に肉薄できる情報を書き込んだとのこと。本インタビューと合わせて各人の結論への手掛かりにしてほしい。) なぜなら、この物語に一生懸命頭を捻ってくれたユーザーさんたちがいてくれたおかげで、想像以上に物語の広がりが生まれたからです。感謝ですね。
−本作独特の難解さを見て、未完の作品だという厳しい評価も一部ではあるようですが?
中澤:それは言われてもしょうがないです。全ての情報を提示していないのはこちらですからね。

「全ての情報を提示していない」と言っていることから、本編には「“真相”に肉薄できる情報」が足りていないと認識しているようだ。 しかし、それが意図的な結果であるならば、「故意に真相を隠した」「最初から隠さなければならないと確信していた」と言うだろう。 「最初はやむを得ず隠していました」「今では、隠さなければならないという気すらしています」としていることから、意図的な結果ではないことは明らかである。 故意性を否定する記述は、Infinity plus付属のPremium Bookの次の記述とも一致する。

−『Remember11』は前2作に比べてストーリーが難解で、考察する楽しみが色濃く出ているように感じました。
中澤 あまり意図したつもりはありません。あくまでも結果的にそうなってしまった、という感じです。

意図的な結果であるならば、「意図してそうしました」と言うだろう。 「結果的にそうなってしまった」としていることからも、意図的な結果ではないことは明らかである。

よって、本編から「“真相”に肉薄できる情報」がゴッソリ抜けているのは、演出目的ではなく、何らかの事情により入れたくても入れられなかったのだと考えられる。 「隠さなければならない」と考えたのは、今になってからであるから、当時はそう思っていなかったのだろう。 だからこそ、「物語の広がりが生まれた」ことを「想像以上」と言っているのである。 また、演出上の都合で削除すべきものであるなら、今でも「“真相”に肉薄できる情報」を盛り込むことはできないはずである。 以上のことから、やはり、当時は、何らかの都合で「やむを得ず」隠さなければならなかったのだろう。 その原因は、やはり、制作の遅れであると考えるのが妥当だろう。

「完成・完結」の意味

開発の遅れが原因で「全ての情報を提示していない」のならば、何故、中澤氏は「あれで完成・完結した物語としてまとめた」と言っているのだろうか。 まず、立場上、未完成と言えないからということが考えられる。 プロとして、リリース済みの作品が未完成とは口が裂けても言えない。 自分の責任で全額返金に応じるなら、未完成だと言っても問題はないだろうが、実際に、責任を負うのは発売元である。 そうした立場上の問題があるから、「あれで完成・完結した物語としてまとめた」と言わざるを得ない。

もう1つ考えられるのは、物語を「完成・完結」するために必須の情報は作品中で提示していると認識していることが考えられる。 「全ての情報を提示していない」が、物語を構成する基幹部分ではない枝葉の部分であるならば、そのことは物語としての「完成・完結」に影響を与えない。 もちろん、基幹部分ではなかったとしても、「全ての情報を提示していない」ことについて、作者の責任が否定されるわけではない。 興味を引くような思わせぶりな描写をしたのは作者であり、それに対して答えを提示しないのは無責任と言われても仕方ないだろう。 とはいえ、残された謎が基幹部分ではないなら、そのことは、物語としての「完成・完結」には影響を与えない。

以上のように、作者の言動に一貫性を持たせることは十分に可能である。

考察することは非推奨

Remember11では、考察は全く勧められません。 何故なら、残された謎を深追いすると、必ず、泥沼にハマるからです。 監督自身が「全ての情報を提示していない」と言っている通り、作品中の設定だけでは答えを出すことは不可能です。 答えを出すには、密かに開発しておいた新兵器で敵を撃破するような、完全後付けの超越設定が必須となります。 しかも、作品中で暗示すらされていない、考察者の完全オリジナルな超越設定が必要です。 そんな子供騙し、かつ、何でもアリの超コジツケ考察で貴方は満足できますか。 どんな反則技でも答えさえだせば良い、と思う方は、どうぞ、好きなだけ深追いしてください。 しかし、最低限度の条件を満足することを求める方は、深追いしない方が良いでしょう。 深追いしても、次のような感想が得られるだけです。

一応一回はクリアしたから考察サイトをのぞいてみたんですが、
その内容を見て納得するどころか、正直、ドン引きしてしまいました
さすがに25にもなって、あんなトンデモな解釈を、
まともに受け入れることはできないです。

そうは言っても、エンディングに納得できないと、その不満を解消したくなる気持ちも分かります。 しかし、深追いしても、その不満は、決して、解消できません。 深追いすると、答えのない謎が増えて、余計に不満が増大するだけです。 納得を求めるなら、深追いせずに、アレはアレで終わりだとエンディングの内容で妥協することをお勧めします。

Last modified:2010/07/31 17:09:15
Keyword(s):[Remember11]
References:[運営その他雑談] [Remember11リメイク版Xbox 360で]
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*1 100グラム制限の反重力装置、10m距離制限のワームホール通信装置、等のように、現実世界では到底不可能な超科学技術が使われていながら、実用的には全く役に立たない装置など