論理的間違いの実例part3
Remember11の考察サイトの論理矛盾を検証してみます。
意識が残留した理由
冬川こころと優希堂悟(主人公)
時空間転移はサークルに含まれる全てのものをごっそり転移する。
人の意識も脳がつかさどるので、脳が転移してしまえば、意識も転移する。
だが、『オレ』や『ワタシ』の意識は……プレイヤーの意識はどうなのだろうか?
そう、意識が残留したのはその意識がプレイヤーのものだからであるのだ。
こころの意識は完全にプレイヤーが支配していたわけではないが、プレイヤーと一緒に残留したと考えるのが自然だろう。
「プレイヤーの意識」が残留する理由は明言はされていません。 しかし、文意から推測すると、それがゲームの世界の物でないために、時空間転移の影響が及ばないという前提なのでしょう。 そう考えなければ、この説明は成り立ちません。
この文章では、「プレイヤーの意識」が時空間転移の対象でないとは言っているようです。 そして、「時空間転移はサークルに含まれる全てのものをごっそり転移する」と明言していることから、「プレイヤーの意識」が転移しないのは、「プレイヤーの意識」がサークル内に存在しない、つまり、サークルの外の存在*1だからということになります。 後に出てくる「虚無の存在」という記述も、それを意図したと読み取れます。
確認しておきますが、この文章の根拠は「プレイヤーの意識」がサークル内に存在しないことです。 サークル内に存在すれば、「全て」「ごっそり」転移されるのであれば、希薄な存在であっても転移対象となるはずです。 よって、転移されない理由は、希薄であることではないのです。
「プレイヤーの意識」が時空間転移の対象とならないとする説明だけは、全く無理がありません。 なぜなら、時空間転移がゲームの中の設定である以上、ゲームの外の存在には影響が及ばないと考えるのは極めて自然な考えだからです。
胎児
それでは、胎児であるαの意識は、なぜ残留したのだろうか。
悟やこころがα肉体にいるときに見た赤い夢の中では、安堵感と同時に、支配感を抱いていたという。
これは、絶対的で虚無の存在であるプレイヤーの立場に類似しているのではないか?
これが原因でαの意識も残留したと考えるの自然だ。
「プレイヤーの立場に類似」とは、何が類似しているのでしょうか。 ゲームの世界の中か外かという点に関しては、「プレイヤーの立場に類似」しているとは言えません。 何故なら、意識が希薄で「虚無の存在」に近いと言えたとしても、胎児の意識はまぎれもなくゲーム世界の中に存在するわけであり、ゲーム世界の外の存在ではないからです。
先に述べられた根拠によれば、転移可能かどうかは、有か無かによって決まるはずです。 そして、「プレイヤーの意識」は無であるから転移しないとされていました。 では、胎児の意識はどうでしょうか。 本当に転移不可能な「虚無の存在」なら胎児はゲームの世界で生きていないことになります。 よって、胎児の意識は希薄ではあるかも知れないけれど、間違いなく有です。 ということは、有か無かという点では、「プレイヤーの意識」と胎児の意識は正反対の性質であることになります。
「絶対的」とは、何をもって断定されているのか明言されていません。明言どころか、示唆する記述もありません。
以上のように、証明事項*2と未証明事項*3が混同され、いつの間にか、未証明事項が証明されたかのように扱われています。 ここまで、未証明事項の証明は一切ありません。
ようするに、これは、論じている物事を意図的に曖昧にして、読み手をケムに巻いているに過ぎません。 しかし、論じている物事が曖昧であれば結論が出せないはずだと気づけば、「類似しているのではないか」という推測が出来るのはおかしいとわかるはずです。 何故なら、本来、「プレイヤーの立場」が何を指しているのかハッキリしなければ、「類似している」かは論じられないはずなのですから。
7日目
プレイヤーの意識が残留するかどうかは、プレイヤーの意思が大きな決定要因になるのではないだろうか?
ここで根拠もなく唐突に「プレイヤーの意思が大きな決定要因になる」説が提示されます。 そう推測する描写が一切無いことは、Remember11考察にも述べた通りです。 しかも、その説を持ち出すなら「プレイヤーの意識」がゲームの外の存在であることを根拠にする必要は全くありません。 どうして、最初からその説を持ち出さなかったのでしょうか。 それは、最初の段階で持ち出せば説得力がなかったからでしょう。 最初に説得力のある説を出すと、その後の新説が最初の説と無関係であっても、それと同等の説得力を持つかのように誤解してしまうのです。
ゲームの外の存在であることを根拠したことはない・・・と言われるかもしれません。 だとすると、尚、悪いですね。 なぜなら、「意識が残留したのはその意識がプレイヤーのものだから」とする仮説が完全に根拠を失うからです。 この仮説は、元になる描写が一切示されていないのだから、それ以外の部分からの推測であるはずです。 しかし、どのような推測なのかは明言されていません。 そして、明言せずとも常識的に分かる範囲に限るならば、ゲームの外の存在であることの他に何か考えられるでしょうか。
もし、根拠のない仮説を持ち出しておいて、その後で、また根拠も無く原因を推測しているなら、それをマッチポンプと言わずして何と言えるのでしょうか。 それは、ゲームの世界との関連性が全く論じられてなく、ただ、自作の物語の中の辻褄を合わせているだけに過ぎません。 それでは、もはや、考察とさえ呼べない代物です。
また、主人公はともかく、黄泉木聖司、黛鈴、内海カーリー、楠田ゆにに意識の残留が起きず、犬伏景子と涼蔭穂鳥だけに意識の残留が起きた原因が全く説明されていません。 何が残留の有無を分けたのかは、この後も全く説明されていません。
犬伏景子
3つめの根拠は、『転移の際のこころ達の意識の残留はプレイヤーの介入による』という考察から。
もし、犬伏達にプレイヤーの意思が関わらないのなら、彼女らが意識の残留を起こした理由が説明できない。
「転移の際のこころ達の意識の残留」の原因は「プレイヤーと一緒に残留した」からと説明されており、「プレイヤーの介入による」ではありません。 また、その後の新説である「プレイヤーの意思が大きな決定要因になる」説でも「プレイヤーの介入」の必要性は示されていません。 つまり、ここでも、「プレイヤーの介入」という条件が唐突に出てきています。
ここでは「意思」と「介入」が混同されてます。 百歩譲って、「介入」が「意識の残留を起こした理由」だったとしても、「意思」は「意識の残留を起こした理由」になりえない。 何故なら、もし、「犬伏達にプレイヤーの意思が関わ」るのならば、プレイヤーは、犬伏達が最初に「意識の残留」を起こす前に、それが起きることを事前に知らなければならないからです。 「意思」と無関係の「介入」であるならば、プレイヤーがゲーム中で未発生の現象を事前に知る必要はないけれど、 「意思」に基づいた「介入」であるならば、未発生の現象を事前に知る必要があります。 しかし、プレイヤーがそうした情報を事前に知る描写はないし、彼の考察でもそうした描写は一切示されていない。
ついでに、もう百歩譲って、「意思」が「意識の残留を起こした理由」の原因だったとしても、その「意思」をゲーム中に反映させる者がプレイヤーである必要はありません。 何故なら、第三者や機械が何らかの方法でプレイヤーの「意思」を汲み取って現実に「介入」するならば、プレイヤー自らが「介入」する必要はないからです。 このように、「意思」と「介入」は全くの別物です。
また、「プレイヤーの介入」という条件は、涼蔭穂鳥や胎児の意識残留と矛盾します。
さらに言えば、本編で榎本尚哉が装置の機能だと説明しているにも関わらず、その説明の真偽を全く検討しないまま「説明できない」と決め付けています。
涼蔭穂鳥
そして、彼女が感じていた『暗くてひとりぼっち』という感覚は、虚無の存在であるプレイヤーと似ているところがある。
「暗くてひとりぼっち」が虚無と似ているとする理由は説明されていません。また、最初の条件を元にすると、意識が希薄であることは「虚無」と正反対であるということは、既に説明したとおりです。
まとめ
以上、意識の残留の理由として挙げられていることを以下にまとめます。
対象 | 原因 |
---|---|
冬川こころ&優希堂悟(主人公) | プレイヤーは時空間転移の対象でない |
胎児 | 絶対的な虚無の存在だから |
犬伏景子 | プレイヤーの介入による |
涼蔭穂鳥 | 暗くてひとりぼっちは虚無に近いから |
7日目 | プレイヤーの意思による |
こうしてまとめてみると、如何に前提事項がその時々で都合良くブレているかが良く分かります。 そして、前提事項を統一すれば、全ての事柄を説明するだけの理由は存在しないことも分かるでしょう。 前提事項がブレることで、未証明事項があたかも証明済み事項のように扱われてしまったために、一見すると辻褄が合っているかのような誤解を与えているのです。
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References:[考察の基本原則]