Remember11考察 優希堂悟
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一人称の違い
プロローグの優希堂悟(オリジナル)は『俺』、本編の優希堂悟(主人公)は『オレ』と、一人称が違う。 このことにより、『俺』と『オレ』には何らかの違いがあると考えられる。 確かに、ユウキドウ計画失敗エンドに出てくる優希堂悟(オリジナル)である『俺』と、本編で優希堂悟と名乗る『オレ』の行動パターンは明らかに違う。 よって、『俺』と『オレ』が別人であると考えるのは正しい。 しかし、『オレ』が具体的にどのような存在であるのかは、記憶喪失と行動パターンの違いくらいしか明示されていない。
喪失の法則性
優希堂悟(主人公)は、記憶喪失の仕方が不可解だと言う。
実に不可解である。
失った記憶と保存されている記憶に全く法則性が見出せなかった。
こんな理不尽な記憶喪失があってよいものだろうか。
これは、結論から言えば、優希堂悟(主人公)の勘違いである。 優希堂悟(主人公)は、記憶を選別して記憶喪失になったと勘違いしているが、正しくは、ほとんど全ての記憶を忘れてしまったのであって、記憶喪失の後で一部の記憶を連想によって思い出したに過ぎない。 選択的に忘れたのではなく、選択的に思い出したのである。
優希堂悟(主人公)は、自分のプロフィール以外、ほとんどの記憶を連想に頼って思い出している。 最初に山小屋で目覚めたとき、スフィアに関する記憶は全く思い起こしていない。 スフィアの記憶が呼び起こされているのは、スフィアを見た後である。 時計台に登ったことを思い出したのも、時計台のことを思い描いた後である。 その時点では、登った後のことは思い出せないが、内海カーリーから転落のことを聞いて、転落したことを思い出している。 人物に関する記憶についても、直接的に姿を見たり、名前を聞いた人以外のことは思い出していない。 お互いが消えてしまったら〜の話(黛鈴は優希堂悟のことをすぐに忘れると言っている)を思い出したのは、黛鈴に忘れられたと認識したことが切っ掛けである。 このように、優希堂悟(主人公)が思い出したことのほとんどは、それを連想する情報を提示された後になってからである。
人間は記憶を連想形式で整理しているので、記憶喪失にしろ、ど忘れにしろ、連想させる何かを情報として提示されると、そこから芋づる式に思い出すことは良くある。 しかし、全ての記憶が都合よく連想の鎖に繋がっているわけではない。 どこかで、連想が弱い部分があると、それ以上先は思い出せないこともある。
このように、外的要因が切っ掛けで思い出しているのだから、心の中だけをいくら検証しても法則性が見出せないのは当然だろう。 思い出せないことは、単に、それを連想させる情報を入手していないだけのことに過ぎない。 だから、記憶喪失の内容には何ら不可解な部分はない。
にもかかわらず、何故か、優希堂悟(主人公)は、記憶喪失の内容が不自然だと言っている。 これは、情報の提示時期的に見て、恐らく、ミスディレクションであろうと思われる。
「アイツの記憶を移植されてる」
優希堂悟(オリジナル)は、優希堂悟(主人公)が推理を間違えたとき、ユウキドウ計画失敗エンドで、次のように言っています。
お互いに睨み合ったまま、微動だにしないオレ達。
先に口を開いたのは奴の方だった。
榎本「お前は……」
榎本「お前は……誰だ?」
悟「えっ?」
榎本「聞こえなかったか?」
榎本「『お前は誰だ』と訊いてるんだ」
榎本「答えろ」
悟「…………」
オレはわけがわからなくなった。
榎本はオレのことを知っているんじゃなかったのか?
なぜ、オレのことを知らない。
それとも、この時代の……『過去の榎本』はまだオレのことを知らない、ということのなのか?
榎本「答えろ!」
繰り返す榎本。
仕方なくオレは答えることにした。
悟「オレは……」
悟「オレの名は……」
悟「−優希堂悟だ」
榎本「な、なにぃっ!?」
狼狽する榎本。
いや、それは狼狽なんて生やさしいものじゃない。
まるで目の前の世界が崩落していく様を目の当たりにしたような、そんな狼狽え方だった。
頭を抱え、よろめき、喉から呻くような声を絞り出していた。
榎本「う、うぅぅぅ……」
榎本「な、なんだと……」
榎本「なんだと! なんだと! なんだとぉ!」
榎本「貴様は……優希堂悟だというのかっ!!」
悟「そ、そうだ……」
悟「それが、どうかしたのか?」
榎本「…………」
オレをギロリと睨みつける榎本。
その目には激しい憎しみと怒りの念が込められていた。
榎本「貴様が……優希堂悟だというのであれば……」
悟「……??」
榎本「ふっ……そういうことか……」
そういって、榎本は表情を曇らせた。
コメカミのあたりをトントンとたたきながら呟き続ける。
榎本「なんてことだ……」
榎本「貴様がここに来てしまうとは……」
榎本「くっ……すべて台無しだ」
榎本「計画は失敗だ」
榎本「自分のことながら、まったく……愚かすぎて反吐が出そうだ」
悟「な、何を言ってるんだ……意味がわからないんだが?」
しかし榎本はオレの質問には答えず、言葉を続けた。
榎本「まあいい……」
榎本「失敗したと言っても、それはひとつの可能性が潰えただけに過ぎない」
榎本「可能性は……世界は無限に存在する」
榎本「簡単なことだ」
榎本「別の世界では、失敗しないとも言える」
榎本「俺さえしっかりしてれば、こんなくだらない結果は生まれない」
榎本「俺は、貴様とは違う」
榎本「断じてだ。断じて貴様のような馬鹿な結果は生み出さない!」
悟「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
悟「オレにはわからないことだらけだ」
悟「どうしてお前がここにいる?」
悟「どうしてお前が生きている*1」
悟「だいいち、ここはどこなんだ?」
榎本「…………」
悟「わからない、わからない……どういうことなんだ……」
悟「説明……してくれよ……」
榎本「お前……」
榎本「馬鹿だな」
悟「なっ……」
榎本「アイツの記憶を移植されてるとはいえ、ここまでなんにも理解できてないとは……」
榎本「我ながら情けないぜ」
悟「記憶を移植……?」
悟「オレのこの記憶の異常は、やはり記憶移植だったのか……?」
ここで、榎本とされている人物は、実は、優希堂悟(オリジナル)です。 この台詞は、「アイツの記憶を移植されてる」と同時に優希堂悟(オリジナル)の記憶もあると、優希堂悟(オリジナル)が認識している証拠です。 優希堂悟(オリジナル)にとって、「アイツの記憶を移植」されたとしても、「ここまでなんにも理解できてない」ことは想定外であることが分かります。 また、「自分のことながら」「我ながら」と言っていることから、優希堂悟(主人公)の人格が優希堂悟(オリジナル)の人格だという認識も持っていることが分かります。 そして、「俺さえしっかりしてれば、こんなくだらない結果は生まれない」のであれば、記憶移植されていても「俺さえしっかりしてれば」優希堂悟(主人公)の行動を制御できると認識していることになります。 しかし、優希堂悟(主人公)の記憶が100%他人の物であるならば、どんなに「俺」がしっかりしていようとも優希堂悟(主人公)を制御できるはずがありません。 言い替えると、優希堂悟(主人公)の記憶に優希堂悟(オリジナル)の記憶が含まれていなければ、「俺さえしっかりしてれば、こんなくだらない結果は生まれない」ことは不可能です。 まとめると、この台詞は、優希堂悟(主人公)の記憶の一部に移植された記憶があると、優希堂悟(オリジナル)が認識していることを示しています。 しかし、この台詞からはどの記憶が移植された記憶であるかは分からないし、記憶全体における移植の占める比率も不明です。
優希堂悟(オリジナル)が『お前は誰だ』と訊いたのは、目の前の人物が見たこともない人物だったからではありません。 優希堂悟(オリジナル)は、目の前の人物の容姿が、榎本尚哉のものであることを知っています。 しかし、この部屋に入る直前に別れたばかりの榎本尚哉が目の前に居るはずがないのです。 だから、優希堂悟(オリジナル)が『お前は誰だ』と訊いたのです。 それに対して、優希堂悟(主人公)は「オレの名は優希堂悟だ」と名乗っただけです。 もし、相手が本物の榎本尚哉ならば、質問の意図を察して、「驚かそうと思って先回りした」などと答えるでしょう。 しかし、優希堂悟(主人公)は、優希堂悟(オリジナル)の意図を理解していなかったために、「オレの名は優希堂悟だ」と答えたのです。 それだけの情報、つまり、榎本尚哉の姿をして優希堂悟を名乗る人物が目の前に居ることだけで、優希堂悟(オリジナル)は全てを悟ったようです。 この後、「アイツの記憶を移植されてる」とする台詞までに、優希堂悟(主人公)が喋ったことは、多世界解釈を知っているかどうかと、引用済の質問文だけです。 以上のことから、優希堂悟(オリジナル)は、移植された記憶の有無を全く確認しないまま記憶移植だと断言したことになります。
尚、「計画は失敗」の「計画」は、計画の変更によって、【当初計画+救出作戦】となっています。 つまり、計画の成功は、当初計画と救出作戦が両方とも成功することを指します。 よって、「計画は失敗」とは、当初計画と救出作戦のいずれか一方の失敗、あるいは、双方の失敗を指します。 ここでは、「貴様がここに来てしまう」ことを判断材料としているので、救出作戦の失敗をもって「計画は失敗」と言ってるようです。 当初計画、すなわち、TIPS92に書かれた「最終レベル」(Remember11考察 ユウキドウ計画参照)については、成功したかどうか不明です。
さらに詳しく追求すると、不思議なことに、榎本尚哉と優希堂悟(オリジナル)の認識が一致しません。 榎本尚哉は、地下室で、次のように述べていました。
男「まったく……困ったことだ」
男「本当に何もかも忘れてしまったようだね」
男「それにしても厄介なことになったものだ」
男「よもや、これほど面倒な状況になってしまうとは……」
男「こんなことなら、きみを時計台になど、のぼらせるべきではなかった」
記憶喪失の原因と考えられる時計台にのぼらせたことを後悔しているのだから、優希堂悟(主人公)の記憶喪失は、榎本尚哉にとって想定外のトラブルであったと考えられます。 TIPS107「榎本尚哉」の記述もそのことを裏付けています。
悟が記憶を失ってしまったこと、並びに、双子の胎児の戯れによって不具合が生じていることを苦々しく思ってはいるが、今更中止することもできず、黙って成り行きを見守っている。
苦々しく思っているのだから、やはり、想定外のトラブルなのでしょう。 一方で、状況を即座に判断したのだから、優希堂悟(オリジナル)にとって、「アイツの記憶を移植されてる」ことは想定内の事態のはずです。 はて?榎本尚哉と優希堂悟(オリジナル)は利害の一致した仲間ではないのですか? 仲間なら、一方にとって想定外のトラブルなのに、もう一方にとっては想定内の事態というのはおかしくないでしょうか。 しかし、もし、「アイツの記憶を移植されてる」が事実誤認であるならば、この矛盾は解消されます。 「ここまでなんにも理解できてない」のは、転落事故に伴う優希堂悟(主人公)の記憶喪失が原因です。 2012年の榎本尚哉は、転落事故と記憶喪失の事実を知っており、それを想定外のトラブルと認識しています。 一方で、優希堂悟(オリジナル)は、転落事故の事実を知らないため、当然、それに伴う記憶喪失も知りません。 そのために、優希堂悟(オリジナル)は、記憶移植が「ここまでなんにも理解できてない」原因だと誤認したと考えられます。 優希堂悟(主人公)を監視カメラで長時間観察してきた2012年の榎本尚哉と、一言二言話しただけに過ぎない優希堂悟(オリジナル)と、どちらの認識が正確かと言えば、言うまでもなく、榎本尚哉の方でしょう。
以上のとおり、優希堂悟(オリジナル)との会話シーン等には、どの記憶が移植された記憶であるかを特定する描写はありません。 記憶の一部分に「アイツの記憶を移植されてる」ことが優希堂悟(オリジナル)にとって想定内であったとは読み取れます。 しかし、個々の記憶内容については移植された記憶であることを特定する情報はありません。 つまり、移植された記憶があると言うならば、個々の記憶の内容について、優希堂悟(オリジナル)が知り得ないことを示す必要があります。
では、優希堂悟(主人公)の記憶の中に、優希堂悟(オリジナル)が知り得ない情報はあったでしょうか。 それが皆無であることは別途説明する通りです。 と言うと、優希堂悟(オリジナル)が知り得たからといって移植された記憶ではないとは断定できないと反論する人も言うでしょう。 しかし、その反論が物語の考察において何の意味を持つのでしょうか。 何ら証拠も示さず、素直に物語を読み解いた結果と違う正解があるかもしれないと主張することに何の意味があるでしょうか。 そんなことを言い出したら、物語の描写全てを疑わなければならなくなり、結果、物語は物語としての意味を失います。 合理的根拠も示さずに「かもしれない」と言うだけなら何とでも言えますが、それは、考察としては意味のないことです。 以上、まとめると次のようになります。
- 優希堂悟(オリジナル)の想定では、優希堂悟(オリジナル)の記憶を保ったまま「アイツの記憶を移植」されるはずだった。
- 実際は、記憶移植の有無は不明だが、想定外の記憶喪失が生じてしまった。
- 優希堂悟(主人公)の記憶喪失を見た優希堂悟(オリジナル)は、それが記憶移植だと誤認した。
詳細な情報を得る努力を怠って早計な結論を導いたことから、優希堂悟(オリジナル)が相当の自信(慢心)家であったことだけは確かでしょう。
具体的記憶内容の検証
ココロ編の黛鈴
ココロ編で冬川こころが黛鈴に聞かされる情報は以下の通り。
- 黛鈴が親の命令で優希堂悟を棄てた
- 黛鈴が優希堂悟に逢うためにどんな酷いことでもやった
- もしもお互いが消えてしまったら〜関係の話
- 黛鈴は強がりな女
- 思い出話の数々(テキストは抽象的な内容だけ)
- 黛鈴のピアスは優希堂悟のプレゼントかと冬川こころが想像(真相を確認していない)
- ピアスが黛鈴の弱点で、優希堂悟は反応を見るのが好き
- 黛鈴は優希堂悟の前では子供っぽい
- ぐるぐるの想い出
プレイヤーが事前に知りうる情報はこれだけしかありません。 黛鈴がココロ編で自分のことを話すシーンは、唯一、これだけです。 また、サトル編では、黛鈴が本音を打ち明けるシーンは2回ありますが、1回目は不安な気持ちを打ち明けるだけで終わっています。 そして、2回目は、黛鈴より先に優希堂悟(主人公)が正解を言っています。 ここに挙げたココロ編以外の情報を知っていたならば、それは、間違いなくプレイヤー以外から得た記憶です。
交際期間と別れた時期
以下、サトル編(1日目前半)の描写。
オレと彼女(黛鈴)は、2年間にも及ぶ長い歳月を共に分け合い過ごしてきたのだ。
オレと彼女が逢ったのは1年半ぶり・・・。
交際期間と別れた時期に関する情報はココロ編では出てきません。
ピアスの贈り主
以下、サトル編(2日目後半)の描写。
耳たぶのピアス・・・。小さなシルバーのピアス・・・。
誕生日のプレゼントに、オレが贈ったものだった。
オレが誕生日のプレゼントに贈ったピアス・・・。
別離れてから、彼女にとっては半年が経つ。
半年経ってもまだ、彼女はあのピアスをしてくれていた。
ピアスの入手元に関する情報はココロ編では出てきません。
お互いが消えてしまったら
以下は、ココロ編(6日目後半)でのお互いが「消えてしまったら」に関する描写。
黛「ねえ、悟・・・覚えてる?」
黛「『もしも私が、突然この世界から消えてしまったらどうする?』って私が訊いたときのこと」
こころ「・・・あ、ああ」
こころ「覚えてるよ」
もちろん、私はそんなことは知らない。
けれど、彼女たちの間にどのようなやりとりがあったのか、だいたいの想像はついた。
黛「その時、あなたはこう言ったわよね」
黛「『鈴のいる世界を見つけるよ』って」
黛「もし、その世界が見つからなかったとしても、『見つかるまで探し続けると思う』って」
黛「あの時の言葉、嘘じゃなかったのね」
黛「あなたは・・・私が消えた後も、探し続けてくれた。こうして逢いに来てくれた」
こころ「ああ、もちろんだ」
こころ「当たり前じゃないか」
私は黛の髪の毛を優しく撫でつけた。
黛「嬉しい・・・」
黛の身体の震えが止まった。
黛「そして、あなたはこう訊き返してきたわよね」
黛「『もしも突然、この世界からオレの存在が消え失せてしまったとしたら、どうする?』って」
黛「私は『半年も経てば、あなたのことなんか忘れてしまう』って答えた」
黛「でも、忘れる事なんてできなかった」
黛「あなたを失ってしまったことが、辛くて辛くて、苦しくて苦しくて、毎日毎日、耐えられないくらいに悲しかったの」
黛「寂しかったの・・・」
以下は、サトル編(1日目前半)での描写。
黛「ねえ?もしも私が、突然この世界から消えてしまったらどうする?」
悟「鈴のいる世界を見つけるよ」
黛「じゃあ、その世界が見つからなかったとしてら?」
悟「そうだな・・・」
悟「たぶん、見つかるまで探し続けると思う」
黛「ふふっ、嘘ばっかり」
黛「ひとの心は移ろいやすいものなのよ?」
黛「永遠に燃え続ける炎なんてないの」
悟「それじゃあ、鈴だったら・・・?」
悟「もしも突然、この世界からオレの存在が消え失せてしまったとしたら、どうする?」
黛「そうね・・・」
黛「熱いシャワーを浴びて、強いお酒を飲んで、ツキノワグマみたいに何ヶ月も眠るわ」
黛「きっと半年も経てば、あなたのことなんか忘れてしまうもの」
悟「なるほど・・・」
黛「なにかご不満でも?」
悟「いや、別に・・・」
黛「そう」
黛「でも、いま私が言ったことは本心よ」
黛「だから逢いたいと思うの」
黛「毎日でも、四六時中でも、できることなら1秒も眠らずに、ずっとあなたのことを見つめていたい」
黛「少しでも目をそらしたら、すぐにあなたのことを忘れてしまうような気がするから・・・」
黛「くちづけをするのも、身体を重ね合わせるのも、そう・・・」
黛「身体のどこかに、あなたがいたことの証を刻みつけておきたいのよ」
悟「・・・」
黛「・・・」
悟「・・・」
黛「ねえ?もう一度だけ・・・」
黛「あなたを刻んで?」
悟「鈴・・・」
弱強調した部分はココロ編になく、プレイヤーには内容を推測することも困難です。
「日本国憲法第100条」
以下、サトル編(5日目後半)の描写。
その時・・・その時だった。
オレの中に、とある記憶が、じわりじわりとにじみ出てきたのは。
やがてそれは、水の上のあぶくのように、パチンと弾けた。
〜(ぐるぐる回想中)〜
黛「日本国憲法第100条1項:優希堂悟は、黛鈴を尊重し擁護する義務を負う」
黛「日本国憲法第100条2項:優希堂悟は、黛鈴のあらゆる命令に対し、それを遂行する義務を負う」
悟「お、おい!ちょっと待てよ」
悟「何だよ、憲法第100条って」
悟「法学部じゃないオレにだってわかるぞ。日本国憲法にあるのは第99条までだ*2」
黛「日本国憲法第100条3項:優希堂悟は、黛鈴に対して、その一切を否定してはならない」
悟「だから、そんな条文はないっつーの!」
黛「うるさい!黙れ!」
黛「さっさとやりなさい」
悟「・・・」
黛「もぉ〜、やってよぉぉぉ」
黛「お願いぃぃぃぃぃぃぃぃ」
〜(ぐるぐる回想中)〜
しかし・・・
あの日がやってきて・・・。
2011年1月11日。
世界は壊れてしまった。
鈴は、突然この世から消えてしまった。
悟「鈴・・・」
悟「オレは、本物の悟だよ」
悟「浜辺でぐるぐるしただろ?」
黛「え?」
悟「日本国憲法第100条1項:優希堂悟は、黛鈴を尊重し擁護する義務を負う」
悟「だから、オレは鈴を守り続ける」
悟「いや、違う」
悟「オレは守りたいんだ、鈴を」
黛「どうして・・・知ってるの?」
黛「私と悟だけしか知らないはずなのに・・・」
〜(想い出話中)〜
黛「もし、あなたが本当の悟だったとしたら・・・」
黛「私の言うことには従うはず」
黛「日本国憲法第100条2項:優希堂悟は、黛鈴のあらゆる命令に対し、それを遂行する義務を負う」
「日本国憲法第100条」はココロ編には全く出てきていません。 優希堂悟(主人公)の記憶がプレイヤーの記憶なら、一体、何処から「日本国憲法第100条」の内容を知ったのでしょうか。
優希堂悟(オリジナル)の癖
以下、2日目、一人交換日記の最初の返事を見た後の優希堂悟(主人公)の行動。
オレはサインペンの底の所でトントンとコメカミをたたいた。
以下、3日目夜、内海カーリーからチーズにかけられた薬品の成分と働きを聞いたときの優希堂悟(主人公)の行動。
オレはコメカミのあたりをトントンと叩き、考え込んでしまった。
以下、4日目夜、避難小屋の楠田ゆにから肉体も精神も2012年のものだと打ち明けられたときの優希堂悟(主人公)の行動。
オレはコメカミのあたりを叩きながら、雪の中をぐるぐると歩きまわった。
以下、ユウキドウ計画失敗エンドで優希堂悟(主人公)が名乗った後の優希堂悟(オリジナル)の行動。
そう言って、榎本は表情を曇らせた。
コメカミのあたりをトントンとたたきながら呟き続ける。
考え事をしている時にコメカミのあたりをトントンと叩く癖を、プレイヤーが始めて見るのは、サトル編で優希堂悟(主人公)が行なったのを見たときです。 ココロ編で優希堂悟(主人公)が出てくるのは最後の最後であり、そのシーンでも、この癖は一度も描かれていません。 そして、それが黒髪の男=優希堂悟(オリジナル)の癖だとプレイヤーが知るのは、ユウキドウ計画失敗エンドを見た時です。 よって、プレイヤーの記憶を元に本物の優希堂悟の癖を優希堂悟(主人公)に反映するのは時系列的に不可能です。 優希堂悟(主人公)の記憶が優希堂悟(オリジナル)の記憶でないとするならば、優希堂悟(主人公)と優希堂悟(オリジナル)の癖の一致は偶然の産物となります。 この描写をうっかりミスで挿入することは常識で考えてあり得ないので、故意に挿入していることは明らかです。 だとすると、何のために偶然の一致を描写するのでしょうか。
プレイヤーは、黒髪の男=優希堂悟(オリジナル)の癖を見た時点では、まだ、優希堂悟と榎本尚哉が入れ替わっていることを知りません。 2人が入れ替わっていることを知るのは、この後です。 この時点で、プレイヤーは、金髪の青年を優希堂悟だと思っているはずです。 ところが、実際には、サングラスをした黒髪の青年がコメカミを叩く癖を実行しています。
優希堂悟(主人公)と優希堂悟(オリジナル)の癖が一致することは、答え合わせをするはずの終盤に新たに提示された情報です。 情報の提示時期から見て、これがミスディレクションであるとは考えられません。 もし、ミスディレクションであるならば、真相を知らせるためのヒントが何処かに埋め込まれているはずです。 そうしたヒントがないならば、この描写こそが真相を知らせるためのヒントであると考えた方が自然です。
まとめ
物語の展開上の都合から見ても、優希堂悟(主人公)の記憶喪失の原因は、記憶移植によるものでない方が良い。 何故なら、記憶移植が原因だとすると、あまりに早期(サトル編の開始早々)に正解そのものを提示し過ぎていて、物語として捻りが足りない。 かと言って、全く何の関係がないのでは、意地悪すぎるし、無駄に複雑になりすぎています。 物語と関係はある、だけど、答えはそのまんまではない……という形だと、非常に良く出来た展開だと言えます。
「アイツの記憶を移植」は、Remember11考察 ユウキドウ計画で書いたように、TIPS92に書かれた「最終レベル」に達するまでの過程によって得られる成果と考えた方が自然です。 であるならば、「アイツの記憶を移植」とは、優希堂悟(主人公)が陥ったような記憶の欠損ではなく、優希堂悟(オリジナル)が知り得ないような新たな知識の獲得だったのではないでしょうか。 優希堂悟(主人公)の言動から見て、「アイツの記憶を移植」は未だ起きていないと考えられます。
優希堂悟(オリジナル)は、記憶欠損による優希堂悟(主人公)の言動を、計画の成果である「アイツの記憶を移植」による言動と誤認したのだと思われます。 優希堂悟(オリジナル)は、計画の目的である「最終レベル」は、当然、達成されることであって、それが失敗することはあり得ないと思い込んでいるのでしょう。 ところが、実際には、計画は「アイツの記憶を移植」の段階で頓挫していたのです。
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