並行世界におけるタイムパラドックス
世界間を移動できない場合
まず、タイムマシンで世界間の移動が不可能と仮定すると次のようになります。
この場合は、それぞれの世界についてPolchinskiのビリヤードを適用する必要があります。
双方向移動可能な並行世界
一方で、タイムマシンで世界間の相互移動が可能と仮定すると次のようになります。
移動対象の世界数が偶数が場合は、問題なくタイムパラドックスが解消します。 世界が2つの場合に「親殺しのパラドックス」を当てはめると、次のようになります。
- 世界Aの未来から世界Bの過去に戻って親を殺す
- 世界Bでは自分が生まれてこない
- 自分がいない世界Bでは世界Aの過去に戻る自分がいない
- 世界Aでは親が死なず、自分も無事に生まれる
- 自分は、世界Aの未来から世界Bの過去に戻ることができる
- 以下、ループ
しかし、移動対象の世界数が奇数の場合は、そう簡単には行きません。 世界が3つの場合に「親殺しのパラドックス」を当てはめると、次のようになります。
- 世界Aの未来から世界Bの過去に戻って親を殺す
- 世界Bでは自分が生まれてこない
- 自分がいない世界Bでは世界Cの過去に戻る自分がいない
- 世界Cでは親が死なず、自分も無事に生まれる
- 世界Cの未来から世界Aの過去に戻って親を殺す
- 世界Aでは自分が生まれてこない
- 自分がいない世界Aでは世界Bの過去に戻る自分がいない
この場合は、全体を一連の流れと見て、Polchinskiのビリヤードを適用する必要があります。
偶数か奇数かで全く違う結果になるのは困りものです。 いったい、世界の数は偶数なのでしょうか、奇数なのでしょうか。 世界の数が有限でないとするなら、それは偶数でしょうか、奇数でしょうか。 そして、無限の数の世界についてPolchinskiのビリヤードを適用することは可能でしょうか。
問題点整理
さて、どの世界に移動するかを決める要因は何でしょうか。 それについて3通りの説を唱えてみます。
- タイムマシンの機能(人為的に選択可能)
- タイムマシンの副作用(人為的に選択不可)
- タイムマシン以外の自然法則
いずれにしても、世界間の移動の法則を見出すことは困難でしょう。
以上、まとめると、次のような問題があります。
- 世界間の移動が可能でなければならない
- 世界間の移動の法則を決めることが困難
- 因果律の計算が破綻する
片側通行の並行世界
ある世界から過去の別世界に行ける場合、逆方向には行けないと仮定すると、パラドックスは何の問題もなく解決します。 しかし、それは、本当に時間旅行に該当するのでしょうか。 実は、過去に良く似た現在進行形の別世界に移動しただけではないでしょうか。 つまり、世界観の移動は行なっているけれど、実は、時間方向への移動は行なっていないのではないでしょうか。 だとすれば、パラドックスを解決しても、タイムパラドックスを解決したことにはならないのではないでしょうか。
多世界解釈
多世界解釈をタイムパラドックスの解決策とする考えは誤りです。多世界解釈ではタイムパラドックスは解消できません。 多世界解釈を持ち出すと返ってややこしくなります。 タイムパラドックスは多世界解釈以外の別の手段で解消する必要があり、それと多世界解釈を絡めて考えると非常にややこしいことになります。 SF作品を描くならば、時間旅行と多世界解釈は同時に採用しない方が無難です。 それを承知で両方採用するという奇特な方のために、以下に考察を進めます。
タイムパラドックス考察は、「片側通行の並行世界」以外と全く同じです。 その基本は、多世界解釈においても当てはまります。 世界の分岐の4次元的形状は固定されています。 未来からの干渉によって分岐路が増えるという考えは、5次元問答に相当する誤った考えです。
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