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5pb.事業拡大/解散→MAGES.(メージス)に対等“吸収”合併

5pb.解散だ!これまでの5pb.ブランドのゲームは全て終了だ!と大騒ぎしている人がいる。 そうした誤った噂が流れているが、信頼できる情報ソースに基づいて、事の真相を明らかにしたい。

吸収合併

確かに、官報には解散と書いてある。

合併会社
左記会社は合併して甲は乙の権利義務全部を承継して存続し乙は解散することになりました。

しかし、存続会社でない方の「解散」は会社法上の吸収合併(慣用表現や俗語の「吸収合併」とは全然別物)の手続に過ぎない。

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。


二十七 吸収合併 会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう。

会社法的な被吸収
他社との合併時に、その形式上の手続として、存続会社とならずに解散すること。大企業が中小企業に吸収されることもある(例:三井住友銀行→解散、わかしお銀行→存続、新会社「三井住友銀行」)。
慣用表現的な被吸収
相手との力関係が明らかに弱い会社側から見た企業合併のこと。
俗語的な被吸収
吸収合併(慣用表現)にて、新会社での主導権を全く握れずに、事実上、合併前の会社の存在が無に帰すこと。

1つの会社には1つの名義(法人登記)があるが、2つの会社が合併して1つの会社になると名義が1つ余る。 そのとき、どちらか1つの名義を廃止(会社を解散)するのが吸収合併で、2つとも名義を廃止して新しい名義を作成(会社を新設)するのが新設合併である。 以上は会社の名義の扱い方であって、必ずしも会社の実態を表してるわけではない。 よって、ここで言う「解散」という言葉からは、経営上の実質的な扱いを読み取ることはできない。

今回合併する両社は関連会社として共同プロジェクトを実施しており、吸収合併しても今更特に驚くようなことは何もない。 もちろん、吸収合併によって会社の経営方針が大きく変わる可能性はあるが、吸収合併の動機は様々であり、憶測で物を言っても信憑性の低いゴシップでしかない。

尚、官報で公告されたのは、債権者の異議申立が可能なように会社法で義務づけられているから。

第七百八十九条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める債権者は、消滅株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができる。
一 吸収合併をする場合 吸収合併消滅株式会社の債権者


2 前項の規定により消滅株式会社等の債権者の全部又は一部が異議を述べることができる場合には、消滅株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者(同項の規定により異議を述べることができるものに限る。)には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
一 吸収合併等をする旨
二 存続会社等の商号及び住所
三 消滅株式会社等及び存続会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

5pb.の貸借対照表が書かれているのは会社法施行規則でそう決められているからであって、経営状態に問題があるからではない。

第百八十八条 法第七百八十九条第二項第三号 に規定する法務省令で定めるものは、同項 の規定による公告の日又は同項 の規定による催告の日のいずれか早い日における次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 最終事業年度に係る貸借対照表又はその要旨につき公告対象会社(法第七百八十九条第二項第三号 の株式会社をいう。以下この条において同じ。)が法第四百四十条第一項 又は第二項 の規定により公告をしている場合 次に掲げるもの
イ 官報で公告をしているときは、当該官報の日付及び当該公告が掲載されている頁


七 前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章 の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容

  • 存続会社(AG-ONE)は「最終事業年度に係る貸借対照表又はその要旨」を官報公告済なので「当該官報の日付及び当該公告が掲載されている頁」のみが記載されている。
  • 消滅会社(5pb.)は官報公告してないので「最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容」が記載されている。

これで異議がなければ、5pb.の債権者にとっても価値のある合併ということになる。

債務超過?

以下、Wikipedia:債務超過より。

ただし、貸借対照表には、事業を継続したときの将来の期待収益は織り込まれていないため、債務超過だから事業を継続する価値がないとは言い切れない。 たとえば、株価を算定する際に将来のキャッシュ・フロー割引現在価値を用いるDCF法を用いれば、債務超過であっても正の株価が正当になることもありうる。

官報に掲載された貸借対照表を要約すると次のとおり。

項目金額(億円)
資産(a)6.5
負債(b)13.6
純資産(c=a-b)-7.1

確かに帳簿上の金額だけを見れば約7.1億円の債務超過である。 しかし、約7.1億円の債務超過の主要原因が当期純損失の約7.5億円にあることは賃借対照表を見れば明らかである。 そして、この当期純損失の原因が何であるのかを調べないと、それが経営不振によるものかどうかは分からない。 当期純損失であるから、当然、これは「当期」に発生した損失である。 もしも、この当期純損失が0円だったならば、計算上は約4千万円の資産超過となる。 つまり、「当期」以前には債務超過となるような累積の負債はない。 「当期」になって、突然に、約7.5億円の損失が発生したのである。 この原因は何か?

5pb.がドワンゴの関連会社になったのは2010年4月22日である。 一方、この貸借対照表は平成22(西暦2010)年7月31日現在のものである。 つまり、ドワンゴの関連会社になった直後の決算にて、突然に、約7.5億円の当期純損失が発生したのである。 資本提携の段階でお互いの財務状況については、当然、調べるだろう。 だとすると、直前の急速な経営不振で負債が倍額以上に膨れ上がるような企業との資本提携は考え難い。 また、残りの3ヵ月で負債が倍額以上に膨れ上がるような急速な経営不振も考え難い。 さらに、ここ最近を見れば、商品の売上減少等の5pb.の経営状況が急速かつ大幅に悪化する要因は見られない。 それで約7.5億円の当期純損失が発生するならば、当期純損失以外の多額の累積負債を抱えていないのはおかしい。 仮に、経営不振により多額の損失を計上したのならば、社長以下、経営者の責任問題となるだろう。 しかし、5pb.の社長がそのまま新会社の社長となっていることから、経営不振が原因とは考え難い。

5pb.の全役員8名中5名が外部から派遣された役員であり、副社長が親会社(ドワンゴ)から派遣されている他、合併相手方(AG-ONE)からも2名の取締役が派遣されている。 このような役員構成であるならば、やはり、合併を視野に入れて何らかの経費を損失に計上しただけと見るべきだろう。 合併相手や親会社の経営規模・状況によっては、約7.5億円の損失計上は、決して、過大とは言えない。

5pb.は、ドワンゴの連結子会社ではなく持分法適用関連会社であるので、連結決算の対象とはならない。 しかし、グループの結束が強いならば、その経営実態を知るには、グループ全体を見る必要がある。 グループ企業において法律の範囲内でトリッキーな会計処理が行なわれることは、決して、珍しいことではない。 そして、その全てを類型にすることが非常に難しいほど、多彩な手段が用いられている。 よって、個別の1会社の決算上の数値だけを見ても、何の意味もない。

以上、官報に掲載された賃借対照表からは、グループ内の1会社の決算上の処理として債務超過になったことが分かるだけにすぎない。 決算上の処理として、合併の準備の為の経費を他の会社に計上せずに5pb.だけに計上したのかも知れない。 もちろん、他の可能性も考えられるが、官報に掲載された賃借対照表だけでは、詳しい情報を読み取ることはできない。 決定的に不足した情報に基づいて「債務超過だ!」と大騒ぎするのは、木を見て森を見ずである。

新会社の方針

まんたんウェブ(毎日新聞)によれば、5pb.の志倉千代丸社長が新会社の社長に就任するらしい。

「シュタインズゲート」「メモリーズオフ」などの人気ゲームを手がけた「5pb.」(東京都渋谷区)が、6月1日付でアニメ・ゲーム事業会社「AG−ONE」(同千代田区)と合併することが明らかになった。 存続会社はAG−ONEで、合併後、社名を「MAGES.(メージス)」に変更する。5月13日の両社の株主総会で決議する。 合併後の新社長には、作詞・作曲家でアニメやゲームのプロデュースも手掛ける5pb.の志倉千代丸社長、副社長はAG−ONEの中西孝副社長が就任の予定。

5pb.の主力商品を潰す予定ならば5pb.の社長を存続会社の社長にはしないだろう。 GAME Watch(Impress Watch)によると基本的には何も変わらないようだ。

5pb.に確認してみたところ、同社のブランドは新体制になっても継承され、今後販売予定のゲームソフトなどは基本的にそのまま発売される。 また、イベントなども行なわれるという。

公式発表でも基本的には何も変わらないとされている。

この度、株式会社5pb.及び株式会社AG−ONEは、対等合併を実施し、平成 23 年6月1日をもって、新たに『株式会社MAGES.』として発足する運びとなりました。


以下、既存事業に関する名称及び方針の変更はございません。 この度の業務拡大に併せ、これまでと変わりのないスタッフ陣営にて、更なる飛躍をめざし、邁進していく所存です。

  • ゲーム事業/5pb.Games
  • 音楽事業/5pb.Records
  • イベント事業/アニメロサマーライブ 他
  • スクール事業/ドワンゴクリエイティブスクール
  • タレントマネジメント事業/ARKRAY
  • 店舗プロデュース事業/Afilia
  • ラジオ制作・代理店業務/文化放送「超!A&G」他
  • ライセンス事業/SEED PROJECT 他
  • コマース事業/ニコニコ直販 他

合併比率

どうでも良いことだが、公式に対等合併だと発表されてるのに、その現実を見れない輩がいるようだ。 以下、Wikipedia:合併_(企業)の解説。

合併比率とは、被合併法人の株式1株に対して合併法人の株式を何株交付するかを表す比率である。合併比率が1対1である合併を俗に「対等合併」と呼ぶ。
合併比率は、両社の資産負債の状況、収益力、ブランド力あるいは経営者の資質などあらゆる観点を比較することにより決定される。

三菱UFJファイナンシャルの解説も合わせてまとめると次のとおり。

  • 合併比率は資産額や負債額だけで決まらない
  • 合併比率は簿価ベースではなく株価ベース

賃借対照表がどうこう言ってる輩には、何処から突っ込むべきか良く分からない。

Last modified:2011/04/24 01:55:10
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