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常識が180度覆る事例

以下の話は、マナーの原則の説明の一部です。 詳細は、マナーの原則を参照してください。

具体例

電話では、自分の名を先に名乗るべきでしょうか。 それとも、相手の名前を先に聞くべきでしょうか。 常識で考えれば、自分の名を先に名乗るのが礼儀でしょう。 では、どんなときでも、自分の名を先に名乗るのが礼儀なのでしょうか。

たとえば、内線電話の一斉呼出機能を使って「私は○○です。××さん、至急連絡ください。」と一斉呼出を行なったらどうでしょうか。 呼ばれた方の立場に立って考えれば良く分るでしょう。 これでは、誰に呼ばれたのか分からずに混乱しますね。

内線電話の一斉呼出では、自分の名を名乗ることは少ないでしょう。 しかし、業務用無線では同様の失敗を良く見かけます。 しかも、名前を聞き返されているにもかかわらず、本人に失敗という自覚はなく、同じことを繰り返します。

原因と対策

失敗の原因は何処にあるのでしょうか。 それは、自ら検証することも無く「自分の名を先に名乗るべき」という具体的結論を「常識」として鵜呑みにしているからです。 そして、その検証しない「常識」を絶対視して、それを守ることに固執するからです。 平たく言えば、何も考えていないからです。 そして、何も考えていないのに、自分が正しいという自信だけはタップリあるのです。

物事には、必ず、基本原則と前提事項と、それらから導かれる具体的結論があります。 基本原則は少々のことではブレない一方で、具体的結論は前提事項によって簡単にひっくり返ります。 基本原則や前提事項を踏まえずに、具体的結論にだけ頼るから失敗するのです。 言い換えると、基本原則と前提事項を踏まえておけば、このような失敗はあり得ません。

具体的分析

何故、自分の名を先に名乗るのでしょうか。 それは、相手から見て正体不明の状態を早く解消するためです。 つまり、基本原則として、いつまでも正体不明状態を解消しないことが失礼に当たると考えるからです。 だから、自分の名前を先に名乗るのです。 しかし、それは、限定された条件でのみ成り立つことです。 相手が聞いていることが前提条件であって、聞いていない状態で何を言っても、言わなかったのと大差ありません。 つまり、一斉呼出の例では、名乗るのが早すぎて名乗っていないのと同じ状態になっているのです。

電話の場合は、受話器を取った時点で、受け答えする人間が特定されています。 一方で、一斉呼出の場合は、受け答えする人間が特定されるのは、相手の名前を呼んだ時です。 受け答えする人間が特定されない状態では、誰も注意して人の話を聞いていません。 某家政婦*1でもなければ、他人の話にイチイチ耳を峙てたりしないでしょう。 だから、相手の名を呼ぶ前に何を言っても、言っていないのと同じことになるのです。

一斉呼出や業務用無線を聞くことだけが仕事の専用のオペレータであれば、全ての通話を注意深く聞いているでしょう。 しかし、仕事のツールとしてそれらを使っている人間にとっては、他にやることが山ほどあるのだから、全ての通話を注意して聞いているわけにはいきません。 だから、名前を呼ばれて初めて「あっ、オレを呼んでいるのか」と気付いて、仕事の手を止めて注意を傾けるのです。

まとめると、「正体不明状態を早く解消すべき」という基本原則に基づいていても、「相手が耳を傾けているかどうか」の前提条件が変われば、その時点で「自分の名を名乗るべき」かどうかの具体的結論が変わってくるということです。 相手が耳を傾けているならば、即座に、自分の名を名乗るべきです。 しかし、相手が耳を傾けていない場合は、まず、相手に耳を傾けさせることが先で、名乗るのはその後でなければ意味がありません。 そして、相手に耳を傾けさせるために相手の名を呼ぶ必要があれば、必然的に、自分の名前より相手の名前が先になるのです。 それは、決して失礼ではありません。 むしろ、正体不明状態を解消できなくなることこそが失礼なのです。

Last modified:2010/04/29 23:43:25
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References:[マナーの原則]
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*1 普通の家政婦は他人の話にイチイチ耳を峙てたりしないが